ラグビー日本代表がまたやりました。
今大会優勝候補筆頭のアイルランドを破ってしまうという快挙。
NHKの豊原アナウンサーが「もう奇跡とは言わせない」とおっしゃっていましたが、世界トップのスピードとパワーを兼ね揃えたアイルランドのアタックを守り切り、後半を無失点に抑える堂々とした戦いぶりは安心して見ていられるような雰囲気さえありましたね。
試合の内容については各所で色んな人が語ると思うので、ここでは最後のシーンについてちょっとだけ説明したいと思います。
俺は冷静ですアピールのための記事的な匂いがしますが、死ぬほど興奮してますよ。
19-12で負けている状況で、アイルランドの選手がボールを蹴り出して試合を終わらせた理由です。
同点にはできる状況だったので、ツイッターとか見てても「あれ?」という反応だったり、ファンの人でもなんでなんでって感じだったのですが、もちろん先を見据えてのことで、決勝トーナメントに進むための勝ち点を取るためということになります。
勝ち点制度とアイルランドが決勝トーナメントに進む条件
ラグビーワールドカップはプール戦の勝ち点で競って上位2チームが決勝トーナメントに進むという形で行われます。
勝ち点についてはJSPORTSの特設ページがわかりやすいです。
ラグビーワールドカップとは? | ラグビーW杯2019 日本大会 | ラグビー | J SPORTS【公式】
プールでは勝ち点で順位を決定する。勝ち点は以下の通り。
勝利:4ポイント
引分:2ポイント
敗戦:0ポイント
また、以下の場合はボーナスポイントが加算される。
トライ数が4以上:1ポイント(勝敗にかかわらず)
7点差以内で敗戦:1ポイント
今回アイルランドは「7点差以内での敗戦」の勝ち点を取る為に蹴り出したわけです。
あの状況は自陣のインゴール付近ですから、ペナルティを犯したりボールを取られたりすると日本が得点してしまい、このボーナスポイントを得られなくなってしまいますし、得失点差も損になります。
最後ボールを奪われる前の日本の攻撃は、もっと時間稼ぎで固くブレイクダウンを作る方法もあったのに普通にトライしにいくノリでしたから、アイルランドとしてもボーナスポイントを死守したい考えが強まったのかなと想像します。
で、その勝ち点1がどれぐらい重要かということなんですが、これが結構大きいです。
まず、アイルランドは日本戦終了時点で勝ち点6になってます。
残りのサモアとロシアを4トライ以上で勝てば16まで伸ばせます。
もし日本戦でボーナスポイントを取れなければ15が最高ということになります。
この15と16に大きな差があるんですね。
どういうことかというと、スコットランドはアイルランドに負けて勝ち点0の現状ですが、残りのサモア、ロシア、日本に全部ボーナスポイント付きで勝てば15まで伸ばせます。
スコットランド全勝ということは日本がスコットランドに負ける想定ですが、日本が残りのサモアに勝ち点5で勝って、スコットランドにボーナス点1を取って負ける(7点差以内か、4トライ以上)と、日本も勝ち点15で3チームが勝ち点で並ぶのですね。
勝ち点が同じだった場合のルールはこちら。(優先度順)
直接対決の勝者
プール戦全体の得失点差
プール戦全体のトライ差数(トライ数−被トライ数)
プール戦全体の得点数
プール戦全体のトライ数
抽選
日本がスコットランドに負けるとなると、3チームが勝って負けてしてるので「直接対決の勝者」では決勝トーナメント進出国は1つも決まりません。
そして得失点差やトライ差数はまだ半分以上試合が残ってる現状では読み切れないので、勝ち点が1ポイントだけでも上回っていれば、スコットランドと日本の試合の結果に関わらずアイルランドは自力で決勝トーナメント進出を決めれるのですね。
というわけでアイルランドは1トライ1ゴールで引き分けに持ち込み勝ち点2を取ることもできましたが、リスクを犯さず勝ち点1を取ったわけです。
そして今、一番決勝トーナメントに近いのはアイルランドになりました。
いやまあ勝ち点狙いで蹴り出すならもっとセーフティに真横とか後ろに蹴出すので歓声でホーンが聞こえずということもありますし結果論といえば結果論なのですが、ワールドカップ級になるといろんな事態を想定して点数のシミュレーションもしますし、後半の後半ぐらいにはインカムで指示あってこういう点差の場合にはこうしろと誰かに伝わってたのではないですかね。
時間過ぎてるのは確認したけどホーンが聞こえなかったという場合なら、真横や後ろに蹴出すと日本有利な状態でリスタートという不安がありますから、あの位置にタッチするのはベストな選択になります。
追記
ブコメで昨年批判されたサッカー日本代表のパス回しとどう違うのかという指摘がありました。
サッカーの試合の流れや精神について詳しく知らないのですが、決勝トーナメント進出狙いの行動という意味では同じだと思います。
あれは他会場の結果頼みということもあり、先を見越すというのとはまた違うスリリングさがありましたけど、基本的には同じ目的で負けを負けのままにするという話です。
もちろん今回のアイルランドを批判する人もいます。
決勝トーナメント云々よりアイルランドが勝つところを見たいファンがいる以上当然でしょう。
高校ラグビーでさえ、負けが決まった試合のラストプレーで蹴り出すと批判する人がいます。
個人的にはプール戦はこの手の駆け引きも醍醐味だと思っていますし、時間来てもプレーが切れるまで試合が続くラグビーでは怪我とか疲労のリスクもあるし選手の判断を尊重したいです。優勝するためにやってることですし。
日本が決勝トーナメントに進む条件
実力からしてアイルランドが勝ち点16を取るのは固いと思います。
なのでやはりスコットランドと日本の試合に全てかかってるという状況です。
日本がサモアに勝ち点5で勝てばその時点で勝ち点は14、スコットランドがロシアとサモアから勝ち点5を取れば勝ち点10。
恐らくこの形で最終戦の日本vsスコットランドを迎えます。
日本がスコットランドに勝てば文句なしで1位通過になります。
負けの場合ですが、まずスコットランドに勝ち点4(3トライ以下)で負け、日本もボーナスポイント取れずという時は「直接対決の結果」により日本は決勝トーナメントに進めません。
スコットランドがボーナスポイント(4トライ以上)を得ない場合は7点差以内に抑えれば日本が決勝トーナメントに進めます。
スコットランドがボーナスポイントを取った場合は前述のようにアイルランド、スコットランドと共に勝ち点15で並んで得失点差やトライ数により決まります。
日本とスコットランドが引き分けた場合はスコットランドが勝ち点12、日本が16になるので、スコットランドにボーナスポイントを取られても日本が決勝トーナメントに進出します。
そしてもう一つ、今列島に接近中の台風で試合が中止になる場合があります。
10/3にアイルランドとロシアの試合があるのですが、もしこの試合が台風の影響で中止になれば試合は引き分け扱いになり、アイルランドとロシアに勝ち点2が与えられます。
こうなるとアイルランドは勝ち点を13までしか伸ばせず、日本がサモアに勝ち点5で勝った段階で決勝トーナメント進出が決まります。
色んな意味であまり後味の良いことではありませんが。
ここまでランキング的にロシアとサモアが負ける前提の話ですが、サモアは前回大会でもスコットランドを追い詰めていますし、どのチームも油断できる相手ではありません。
特にサモアは海外でプレーしてる選手が多く、ワールドカップの時ぐらいしかベストメンバーが集まらずランキングも参考にならないチームで、大会中に連携を高めてくるので中々危険な相手です。
というわけで、日本まだまだ油断できない状況です。引き続き大会中に覚醒を続ける日本代表を応援しましょう。
日本は1位通過ならおそらく南アフリカ、2位通過ならニュージーランドと当たります。
僕はアイルランドが優勝候補だと思っていたので、今日のような出来であればどちらにも十分勝てるのではないでしょうか。
日本の舞台でニュージーランドが日本にカパオパンゴ食らわすという痺れるシーンが見られるかもしれませんね。