いい加減こういう帯で煽るのどうかと思いますね。
というか、泣く泣くと言われて読んだ本や映画で泣いた試しがあるのでしょうか。
でもこの作品は泣けるわけじゃないけど面白いのは確かです。
ネタバレはしませんが、予備知識なしで読んだほうが面白いと思うので読む予定のある方はこっから先読まないように。
東野作品ってどれも作風が違うけど、この作品は特に毛色が違ってます。
5章からなる連作短編集なのですが、実は全部繋がってるっていうあのパターンです。
伊坂幸太郎さんとかが得意なアレですね。
東野圭吾さんで言うと新参者とかもそうですが、それとはまた違った感じです。
各章ごとの登場人物には一見共通点もないように見えるのでラストは特にうまいと関心させられます。
逆にちょっと説明セリフ臭い部分があってその辺は残念でしたね。
「過去と未来で手紙のやり取りをする」というシンプルなルール設定もいいし、主人公達もコントみたいで面白いです。
手紙のやり取りは悩み相談とそれに答えるという発言小町みたいな感じです。
この小説では誰も夫の年収自慢したりしませんが、その手紙の応酬が実に読ませます。
普通作品内に出てくる文章ってなんか読むのめんどくさくなるじゃないですか。
一風変わった作風なのにさすが東野圭吾といった感じです。
〝最も泣ける作品〟じゃなくて〝最も匠な作品〟とかのほうが近いんじゃないですかね。
泣きたかったら秘密とか夜明けの街でとかいいんじゃないでしょうか。
男が読むと泣くっていうよりなんか凹みますが。